入浴時間は5分くらいが適当であると教えられましたが・・・
何年ぶりかで入浴をたのしむ老人は、「もう少し、もう少し」となかなか上がりたがりません。
そのあいだも看護婦さんは時どき脈をとり、万全を期しておられます。
その後、入浴車の評判は高まり、わたしの町でも25人の患者さんが入浴をさせていただきました。
ねたきりになってねがえりひとつ思うにまかせぬ人たちの唯一のたのしみは、月一回の入浴のその一瞬にあるようです。
ものもいえず、身動きもできない患者も「おじいちゃん、入浴よ」と声をかけると、何ともいえないよろこびを顔いっぱいにあらわします。
もう少し自分で動ける人たちはデイサービスで頻繁に入浴できるのですが・・・。
そして入浴後は、満足感と安堵でその顔は仏様のようになごみます。
炎天下の入浴はもう汗だく。
1日3回の入浴にわたしたちは大汗をながします。
また、冬は雪のため車が溝に落ちたり故障したりで、仕事につくまでがたいへんです。
こうして、患者さんとわたしたちは親子以上の信頼に結ばれ、2年半を経過しました。
そのあいだに余病を併発したり、再発したりで、不幸にも亡くなられた老人は11名になりますが・・・
「入浴車のみなさんの御恩は死んでも忘れない」と感謝され、なかには形見を残してくださったり、新聞紙上へ感謝の詩を載せてくださったり・・・
命の灯火のつきるときなお、走馬灯のように入浴のたのしかったことを偲んでいたことをきき、懐かしく思い出されます。