壁の破れたところから吹雪が舞い落ち、老人は首にまいたタオルで鼻をふいています。
「わあ、おじいちゃん。寒いでしょう。せめてあの壁の破れたところへ板でも打ちつけたらどうかしら」
・・・と声をかけると、「寒いことくらい3つの時から知っとるわい」とどなられました。
ごみと埃がたまり、汚れた衣類がぶらぶら下げてあるところから異臭がただよい・・・
何から手をつけてよいやら、立ちつくしたまま、しばらく言葉が出ませんでした。
「おじいちゃん、食事はどうしているの」
「これさえあれば何もいらんわい」
・・・と一升びんをさしあげて見せました。
ご飯が食べたくなれば飲み、お茶をほしくなれば飲み、酒で命をつないでいるとしか思えません。
近所の人とのつきあいもなく、以前民生委員さんがたまりかね、毛布を買ってもっていったところ・・・
「頼みもせんのに、こんなものいらんわい」
・・・と受けとってくださらないので、福祉センターからの寄贈だといったところ、あとでセンターへ達筆の礼状が届き、わたしたちは驚いたこともあります。