2011年11月アーカイブ

壁の破れたところから吹雪が舞い落ち、老人は首にまいたタオルで鼻をふいています。


「わあ、おじいちゃん。寒いでしょう。せめてあの壁の破れたところへ板でも打ちつけたらどうかしら」


・・・と声をかけると、「寒いことくらい3つの時から知っとるわい」とどなられました。


ごみと埃がたまり、汚れた衣類がぶらぶら下げてあるところから異臭がただよい・・・


何から手をつけてよいやら、立ちつくしたまま、しばらく言葉が出ませんでした。


「おじいちゃん、食事はどうしているの」


「これさえあれば何もいらんわい」


・・・と一升びんをさしあげて見せました。


ご飯が食べたくなれば飲み、お茶をほしくなれば飲み、酒で命をつないでいるとしか思えません。


近所の人とのつきあいもなく、以前民生委員さんがたまりかね、毛布を買ってもっていったところ・・・


「頼みもせんのに、こんなものいらんわい」


・・・と受けとってくださらないので、福祉センターからの寄贈だといったところ、あとでセンターへ達筆の礼状が届き、わたしたちは驚いたこともあります。

最近訪問するようになった老人Eさんも頑固というか・・・


その仙人のような生活ぶりは、とても普通では理解できないものでした。


水道も電気も便所もない、もちろん電気製品は何ひとつありません。


デイサービスも利用してないとのこと。


台所の部分は屋根が落ちてしまい居間の壁さえとれてしまって空がみえます。


玄関に板をうちつけ、それいちめんに漢文でぎっしり何やら書いてあります。


はじめて訪問した日は1月下旬の雪のふる寒い日でした。


玄関を開けて中へ入ったわたしは、その異様な光景に呆然としました。


空の一升びんと古新聞の山の中に、ふとんの抜き綿を敷いて、その中に足を入れうずくまっています。


・・・もちろん、こたつもあんかもありません。

福祉事務所のケースワーカーも、老女の気持ちを傷つけないように施設への入所をすすめましたが・・・


とうとう承諾しませんでした。


結局、老朽化していたんでいる部分を補修してもらいましたが、それからの老女は


「あんたが役場へしゃべったから、こんなことになったんや。わたしはとのお寺が潰れたらその時いっしょに死ねたらそれで本望や」


・・・と恨みをいわれました。


しかし、お寺が潰れて、その下敷になれば本人は本当に幸せなのでしょうか。


わたしたちヘルパーやデイサービスは「ハイそうですか」とただみているだけでよいのでしょうか。


もし、そのような事がおきたら大きな社会問題だと思います。


そして、この人のように、頑固なご老人を、いつどのように説得して、安全で快適な還境へ送りとどけたらよいのか、悩んでいます。

山間の荒れ寺に住むM老女。


彼女は、戦前は金沢の中学校で美術の先生をしでいる方の奥さんでした。


戦後食糧難と夫の退職で現在のお寺に住むようになりました。


・・以来30年、ご主人もお寺の住職も亡くなり、老女ひとりが留守番がわりとして寺の一隅に生活しています。


毎年冬になると寺院の老朽化が問題になり、その都度老人ホームへの入所をすすめていますが、老女は頑として首をタテにふらない。


2匹の犬、6匹の猫を飼っているので、それらと別れるのが辛いのか、住みなれた地を去りがたいのか、この話になると固く口をつぐんで返事をしないのです。


せめてデイサービスだけでも利用できればいいのですが・・・・


頭はとてもしっかりしていますが、腰がひどく曲り、住んでいるお寺の中2階の階段を踏みはずして転がりおち、顔中はれあがったこともありました。

入浴時間は5分くらいが適当であると教えられましたが・・・


何年ぶりかで入浴をたのしむ老人は、「もう少し、もう少し」となかなか上がりたがりません。


そのあいだも看護婦さんは時どき脈をとり、万全を期しておられます。


その後、入浴車の評判は高まり、わたしの町でも25人の患者さんが入浴をさせていただきました。


ねたきりになってねがえりひとつ思うにまかせぬ人たちの唯一のたのしみは、月一回の入浴のその一瞬にあるようです。


ものもいえず、身動きもできない患者も「おじいちゃん、入浴よ」と声をかけると、何ともいえないよろこびを顔いっぱいにあらわします。

もう少し自分で動ける人たちはデイサービスで頻繁に入浴できるのですが・・・。


そして入浴後は、満足感と安堵でその顔は仏様のようになごみます。


炎天下の入浴はもう汗だく。


1日3回の入浴にわたしたちは大汗をながします。


また、冬は雪のため車が溝に落ちたり故障したりで、仕事につくまでがたいへんです。


こうして、患者さんとわたしたちは親子以上の信頼に結ばれ、2年半を経過しました。


そのあいだに余病を併発したり、再発したりで、不幸にも亡くなられた老人は11名になりますが・・・


「入浴車のみなさんの御恩は死んでも忘れない」と感謝され、なかには形見を残してくださったり、新聞紙上へ感謝の詩を載せてくださったり・・・


命の灯火のつきるときなお、走馬灯のように入浴のたのしかったことを偲んでいたことをきき、懐かしく思い出されます。


今日からブログをはじめます。


タイトル通り、ここでは主に介護やデイサービスについて・・・


あとは気になった社会福祉のニュースについて書いていこうと思います。


どうぞよろしくお願いいたします。


さて、この間、わたしの町の第一号車を巡回させ、入浴させることになりました。


慎重でテキパキとした専任看護婦さんの行動と度胸のよさは、永年病人をあつかってきた方ならではのもめで・・・


いっしょに仕事をさせていただきながら、いつも感心させられます。


ねたきり老人の寝床のそばまで浴槽を運び、瞬間湯沸し器よりお湯が送られてくるまでのあいだ、看護婦は患者の血圧、脈搏の測定をされ・・・


そのときの病状が入浴にさしさわりのないものかどうか確認されます。


そのあいだにさし水を運び、髪をカットしたり、ヒゲを剃ったりします。


浴槽に3人がかりで患者を浸し、静かにていねいに、そして手早く洗います。


患者の顔色と息づかいにたえず注意しながら入浴をすすめるあいだは真剣そのものです。